ゴキゲン中飛車の序盤で、面白い変化があります。
初手からの手順を記します。ただし、「先手−ゴキゲン中飛車、後手−居飛車」
先手「5六歩」、後手「3四歩」、「5八飛車」、「8四歩」、「5五歩」、「8五歩」
「7六歩」、「8六歩」、「同歩」、「同飛車」、「5四歩」、「同歩」
「2二角成り」、「同銀」、「7七角打ち」、「8九飛車成り」、「2二角成り」、
そこで、後手「5五桂打ち」
桂打ちで先手の馬の利きを遮断し、次に「7七角打ち」の王手を狙います、
「7七角打ち」に対して先手がどのように応じても、桂を王手に移動し、2二の馬を抜いてしまう含みです。
つまり、「7七角打ち」は「王手馬取り」なのです。
王手で「7七角打ち」を食らっては、将棋が終わってしまいますから、先手は「4八玉」の一手。
以下、後手には「6七桂成り」として先手の飛車を責める手段、
「9九竜」で香車を手に入れ、「4四香打ち」から王頭を窺う手段等が考えられます。
以下、「双方とも正確に対応すれば互角のわかれ」が現在の処の結論です。
※「5五桂」で敵の「2二」の馬に対して壁を作り⇒
※その影から「7七角」と王手をする⇒
※「6七桂成らず」若しくは「4七桂成らず」または「4七桂成り」=いずれも王手、先手の応手によって選ぶ⇒
※今し方作ったばかりの壁を崩し⇒
※「2二」にいる敵の馬を角で素抜く。
これ、面白いと思いませんか?
ゴキゲン中飛車の生命線
上記の手順で、初手を除いた12手目まで、主導権は居飛車側にあります。
ゴキゲン中飛車を目指す限り、先手は後手の差し手に追随するしかありません。
13手目で、先手には二つの選択肢があります。
一つは上述の「2二角成り」で、これは互角の別れになることが判りました。
もう一つは、「5四飛車」です。
「5四飛車」以下の手順は省略しますが、中飛車側が若干指しやすいと言われています。
以上の検証から判ることは、
「手順中、居飛車側から、形勢を有利に導く手はない」ことです。
これは、戦法の生命線を担保する最低限の要件です。
後手番のロマン
後手番ゴキゲン中飛車にも、これに似た変化が出てきますが、こちらの方はもっと「おおごと」です。
この変化の如何は、将棋有史以来の大きな命題に係わるからです。
プロの対局の勝率は、僅かながら先手が勝ります。
終局まで平均百手以上を要する将棋の対局。
実際に指された手順に付随して膨大な変化が潜在します。
この遠大な道程の出だしの一歩の差が、プロの精緻な業を以てすれば、ゴールの着順に影響する。
これは構造上の属性でしょうか。
「開局時の一手の遅れを埋める戦術」の在りや無しや。
将棋というゲームの品位を問う命題が、これです。
囲碁は先手有利が判明しています。将棋はどうか?
もし、後手番対局者の選択のみに依存して互角の分かれをもたらす方策⇒
「先手側が全て最善手で応じても後手から見て互角以上の分かれ」左の条件を満たす序盤作戦があれば、
先手番、後手番、の別による開局時の不公平を否定できます。
古来、最高峰から筆者クラスのヘボ将棋に至るまで、数多の将棋指しが、この命題に挑んできました。
振り駒にしろジャンケンにしろ、誰もが等しく50%の確率で後手を持つのですから、否応ありません。
解答の有力候補が、角道を止めた「振り飛車」です。
角道を止める、、屈服に近い折り合いの付け方だと断じる向きも少なくありません。
「ゴキゲン中飛車」は、この妥協にサヨナラできる戦法かもしれないのです。
しかし、それには序盤で不利に陥る必然手順が存在してはなりません。
前述の筋で、関門を一つはくぐり抜けました。
後手番振り飛車のエースとしてもて囃された「ゴキゲン中飛車」も居飛車側の対策が進歩して最近は勝率が良くないそうです。